龍勢まつり

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龍勢まつりとは


龍勢の構造

龍勢とは「椋(むく)神社秋の大祭」に奉納する神事として、代々伝承され続けてきた「手作りロケット」のことです。
檜にかけて打ち上げる様が、龍の昇天の姿に似ていることから龍勢と呼ばれています。

ロケット推進の噴射によって約500メートルの高さまで上昇するもので、土地の古老より構造や火薬の取り扱い方などを伝承した若衆が製造します。
伝承技術の相違によって二十七流派あり、それぞれが独特の工夫をこらすため、各龍勢も個性的なものに仕上がります。
観客が打ち上げの成功を一喜一憂する中、十数分おきに三十数本の龍勢が打ち上げられます。

龍勢の製法

祭りの日が近づくと、それぞれの耕地や奉納者団体では、矢柄となる青竹をさがし、根本から切り、先端の枝葉を残して道ばたに立てます。
火薬筒は、太さが適当な松の木を伐採し、それを縦に真二つに切って作ります。
墨入れはキャリアを要し、おおむね頭領の仕事です。

墨入れにそって松材をくり抜きます。
周りの壁を均等の厚さにするのに熟練を要します。
工具も柄の長い専用のノミを使い、火薬が均一に詰まるよう、限りなく滑らかに、半円に仕上げていきます。

くり抜いた松材を2つ合わせ、竹のタガをかけていきます。
これは火薬の燃焼の圧力に耐えるためです。
根本から先へ行くのに従ってだんだん直径をせばめ、総計20数本のタガで松材をおおってしまいます。

硝石、炭、硫黄を混ぜ黒色火薬を調合します。
比率はそれぞれの流派によって異なりますが、硝石10・炭2・硫黄1を標準とします。
混ぜ合わせた火薬に日本酒などで湿り気を与え固めやすくします。
しかし、その日の天候によっても左右される微妙な作業で、経験とカンが求められます。

火薬筒に黒色火薬を詰めていきます。
椀1杯の火薬を入れては、キメ棒、カケヤを使い、たたいて堅く詰めていく作業で、ひたすら体力との勝負です。
これを何回も繰り返して筒いっぱいの火薬を詰めます。

筒の底に錐で穴をもみ、噴射口を作ります。
火薬の強さと穴のくり方のバランスが上昇に大きく影響を与えるため、慎重に、まっすぐに、深さに注意しながら開けていきます。

祭りの前日、龍勢に取り付けられるショイモノ(背負い物)を作ります。
唐傘、吊し笠などで、これらは龍勢が上空に昇りつめた時、ひらひらと落ちてくるように仕掛けます。
近年は大きな落下傘で矢柄を吊り下げる「矢柄止め」などが多く見られ、煙火も派手になっています。

前日に仕上がり、きれいに化粧された龍勢です。
湿気を防ぐためビニールやアルミホイルで火薬筒を被い、あでやかな布で装飾します。
翌日の打ち上げにそなえ、すべての調整と点検を終えて、今は静かにたたずんでいます。

打ち上げ

打ち上げの順番がくると、自分たちの龍勢を櫓までかついでいきます。
待ちに待った瞬間がやっと訪れ、若衆の顔は紅潮し気勢が上がります。
1年間にわたって構想を練り、丹誠込めて作り上げた龍勢をお披露目します。年に1度の若衆の花道です。

高さ約20メートルの打ち上げやぐらに龍勢をセットします。
細心の注意を払いながらロープで引き上げ、導火線を付け、打ち上げ方向を定めます。関係者は思わず手を合わせ成功を祈ります。
準備が完了すると、やぐらの上でオンベイ(幣束)を振りながら、「東西、トーザイー、ここに掛け置く龍の次第は~、…(中略)…これを椋神社にご奉納~。」と口上(こうじょう)を述べて披露し、やぐらを後にします。

点火の一瞬を数万人の観客が息をのみ待ちます。
やがて導火線に火がはいり、点火と見えた瞬間ごう音を発し、一瞬に300~500メートル上空に昇りつめます。
成功すると大拍手がわき起こり、製造した流派に喝采を送ります。

昇りつめた龍勢は、落下を始めるやいなや仕掛けを披露します。
直径数メートルもの大落下傘で吊り止めて、花火や色煙に飾られて、ゆっくり弧を描きながら空中を遊泳します。
観客の拍手や歓声がいっそう増し、構想どうりの展開に、頭領の目頭が熱くなる一瞬です。

しかし、いつも成功するとはかぎりません。
固めた火薬に隙間などがあると一瞬に火がまわり、ツツッパネ(筒がはねる)をおこします。
爆弾が炸裂したようなごう音と共に、龍勢はこっぱみじんに砕け飛びます。
また、火薬がかたすぎたり燃焼が遅すぎたりすると、炎と白煙を出し続けるものの噴射力が弱く、上昇することができません。
このような龍勢をイヅクマリ(居たままうづくまる)と呼びます。また1年、構想の練り直しが始まります。

基本情報

名称 龍勢まつり
場所 秩父市吉田 椋神社周辺
開催日 10月第2日曜日
駐車場 あり

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